遺言のおすすめ・横浜市の馬車道司法書士事務所
2019/09/08
増えている相続(争族)問題
家庭裁判所での遺産分割事件は平成17年には9,581件、平成22年には10,849件、そして平成27年には12,615件と、年々増加しています。
50歳以上の死亡者数と件数の割合から見てもその数は増加傾向にあります。
また、事件の3割は解決に1年以上の時間がかかっており、テレビ等でも報道されているように、相続に関する争いごとが深刻化しているということがいえます。
相続人ごとにそれぞれ何分の何という形で相続分というものが民法によって決められています。これを法定相続分といいます。
普通、これにそって遺産をどのように分けるかを、のこされた方(相続人)同士で話し合って決めることになります。
しかし、不動産などは分割することが難しいため法定相続分どおりにわけるよりは、たとえば配偶者は不動産を、子どもは預金を、といった具合に分けた方がよいなど、後々のことまで考えて話し合うことになります。
この話し合いを遺産分割協議といいます。
しかし、この「協議」で決まらない場合が増えています。
被相続人が生きているうちは、相続人たちも仲がよかったのに、いざ亡くなられて財産があることが分かると、相続人の中には急に態度が変わり自分の主張を曲げない人も出てきます。
お金が絡むことだけに、財産に関する話し合いを超えて、人間関係まで壊れてしまい泥沼状態になってしまうことがよくあるのです。
このような事例があとを絶たず、「相続」が「争族」とまで言われるようになりました。
「遺産分割」が協議でまとまらず争いが生じてしまった場合には、家庭裁判所において「調停」または「審判」という裁判手続によって遺産分割を取り決めることになります。これを遺産分割事件と呼びます。
争族にならないために、終活
このような、家族や親族の間で揉めてしまう悲しい「争族」になるのを防ぐために、遺言が役に立ちます。
亡くなった方が遺言を残しておけば、よほど偏った内容でなければ相続人たちも亡くなった方の意思を汲み尊重して納得することができ、争いにまで発展してしまうことを防ぐことができるでしょう。
終活を始める方が増え遺言への理解も高まり、遺言をのこそうとお考えになる方が増えてきました。
遺言というと、亡くなる直前にするものであるとか、親や配偶者に遺言を書くことをお願いすると気を悪くされるのではないかとお思いの方も多いと思います。
しかし、遺言とは単純に財産の分け方を記すだけでなく、自分の気持ちをのこすこと、伝えることであり、結果として、残されたものが争いになることを防ぎ、家族にいつまでも仲良く暮らしていってもらうためにも必要なのだということを理解していただければ、遺言を書くことへの抵抗も少なくなるのではないでしょうか?そして自分の気持ちは、意志がしっかりした元気なうちに残していただくことが大事なのだと思います。
特に次のような場合には、遺言を残しておくことをおすすめします。
- 夫婦の間に子供がいない場合夫婦の間に子供がいない場合には、配偶者4分の3、亡くなった方の兄弟に4分の1、と法定相続分が定められています。
長年連れ添った配偶者に財産を全部残したいときは、遺言で明記しておく必要があります。 - 内縁の妻に財産を残したい場合内縁の妻には、法律上相続権が認められていません。
したがって、内縁の妻に財産を残したいときには必ず遺言を残しましょう。 - 相続人が1人もいない場合相続人が1人もいない場合は、遺産は国庫に帰属してしまいます。
生前にお世話になった人など遺産を残したい相手がいるときには、遺言によって残すことができます。 - 子供の配偶者にも財産を贈りたい場合子供の配偶者にも、相続権は認められていません。
実の子どもたちよりも親身に世話をしてくれた嫁であっても、遺産を受け取ることはできません。遺言によって残してあげましょう。 - 事業を経営している場合事業を特定の後継者に承継させたい場合にも、遺言を残しておくことが必要です。
この他にも、不動産の登記を便宜上子ども夫婦連名にしていた、など、遺産が意図しない相手に行ってしまうことが無いようにするなど、遺言は本当に大切です。
繰り返しになりますが、遺言とは単純に財産の分け方を記すだけでなく、自分の気持ちを残すこと、伝えることです。それは家族の絆や、残されるものたちを守ることなのです。残していくものたちのために、遺言を残すことをお勧めします。
しかし、遺言にはいくつか種類があり、その内容に効力を持たせるためには所定の書き方や手続きがあります。さらに、遺言で出来ることと出来ないこともあります。そして、遺言よりも優先される「遺留分」というものもあります。
遺言を書こうと思い立ったら思わぬ不備などで思いが無効にならないよう、ご相談いただくと確実です。
この記事を書いた専門家
馬車道司法書士事務所 司法書士
山中康継
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